※一部、性的な描写を含みますのでご注意ください。






 一仕事終えた昼下がり。
 解散場所から近かったからという理由で天空闘技場の中にあるひとけのないレストランで昼食を取っていると、最後の一口を食べ終えたところで、背もたれのない椅子のせいでむき出しになったままの私の背中に突然ゴリッと何かがこすりつけられた。
 それは勢いよく密着すると、一・二度私に「それ」の形を確かめさせるように左右上下に動いてから、少し距離を離してツンツンと先端で背中をノックし始める。
 感触から察するに、固くて、細長い、ある程度の強度がありそうなそれは布越しに私の背中を刺激していたが、恐らく本当に刺激されているのは私の背中ではなく「それ」であろうと私は理解していた。
 そして私の知る中で、私に気配を察知させることなくこんなことをしてくる輩はただ一人、頭のだいぶおかしい奇術師しかいなかったのでなるべくなら振り返りたくなかったのだが――振り返らなかった場合一体ナニが背中に付着する結果になるかということは想像に難しくなかったので、私は手に持っていたフォークを皿の上に置くとゆっくりと後ろへ首を動かした。
 すると視界いっぱいに飛び込んできたのは、先ほど脳内に浮かんだ顔と寸分違わぬ気持ち悪いほどの恍惚の笑みを浮かべた奇術師然とした男の顔で、何か一言文句を言ってやろうと顔を顰めた瞬間、それよりも早く、私はその男によって両頬を大きな手のひらに囚われ顔の位置を固定された。
 やばい、と体が危険を訴えるが、大の男に、更にはこの男の特徴とも思える念能力を、顔を掴まれた瞬間手のひらと顔の間にべっとりと使われたせいで全く顔は動かない。
「待って、え、なに、ヒソカ、」
「ひさしぶり、♦」
 そうなってしまえば、元々たいした空間なんてなかった二つの顔を隔てる距離がゼロになるのに時間はかからなかった。
「――! アンタ、ちょ……んむっ! ンッ~~!?」
 突然の行動に戸惑った私が目を開けたまま硬直すると、相手の男――ヒソカの舌が重なった唇を掘るようにして私の口の中へと侵入してくる。どこまで長いんだこいつの舌はといいたくなるくらいに伸ばされたそれが無遠慮に私の口内を蹂躙していく。
 そうして数十秒ほどの間、たっぷりと時間をかけ歯列から上あごから何から何までを貪りつくしたヒソカは最後の仕上げとばかりに私の舌をじゅう、と吸ったあと、漸く目を細めて唇を離した。
 離される際、ちゅっ、と控えめに鳴らされたリップ音が心底憎たらしい。
「ん、ハァ……♥ 今日のランチはパンケーキかい? 悪くない、ね……」
「……っは……いや……悪くないね、じゃないよ……味の感想とかほんとどうでもいいから……」
 ヒソカ、と私が呼んだこの男は、私のただの知人である。
 正確に言うなら仕事を何度かともにしたことのあるだけの知人である。
 そしてもう一つ付け加えるならば、こうやって出会い頭にキスをされたのは今回が初めてであるが、私がそんな理不尽な暴力に怒鳴り散らさないのはこの男の頭が常人では理解出来ないほどにブッ壊れているからである。勃起した下半身を体にこすりつけられたのは初めてではなかったといえばそれを少しは理解してもらえるだろうか。
 つまりは「そういうヤツ」だということである。
 なまじそういう強行に出られるくらいに力があるだけ面倒な男なのだが、それに抵抗して万が一ヒソカを刺激することがあれば本気で何をしてくるか分からないので、こうなった場合は大人しくしているのが最善だと私はヒソカとの付き合いの中で理解している。
 数多の接触の末、理解させられた、といった方が正しいかもしれないけれど。

「いきなり何してくれてんの……」
 相手の唾液に濡れた唇をテーブルに備え付けのナプキンでゴシゴシと拭うと、私は遠慮なくヒソカの脇腹を凝で覆ったグーで殴りつけた。
 少し痛がる素振りを見せたヒソカが脇腹を片手で押さえながら、唾液で塗れた己の唇をこれでもかというくらいに卑猥に長い舌で舐めとる。
 こいつマジでそろそろ公然わいせつ罪とかで捕まるんじゃなかろうか。
「いきなり? 人聞きの悪いこと言わないでくれよ……ボクは合図を送ったじゃないか、ちゃあんと、のココに♦」
 つう、と私の背中を人差し指でなぞりながらヒソカが笑う。
 合図だと全く理解できない個人解釈と下半身の押し付けにげんなりした私は、辟易とした顔をまんべんなく顔に貼りつけて返す。
「言葉で言ってほしかったしそもそもアンタ何で合図してんだよ……ハァ……気分最悪だ……」
「……つれないなぁ♠」
「これが普通のリアクションだからね!?」
「でも気持ちよかっただろう?」
「…………」
「ごめんごめん、そんなに睨まないでくれよ♦」
 返答をしながらも時折赤く濡れた舌をこちらにちらちらと覗かせる辺りヒソカという人間が反省とは程遠い位置にいることを私に悟らせる。
 ただ、ヤツから自発的に言葉にされた気持ちよかったという問いかけに、気持ち悪いと思うより先に無性に不穏な色を感じた私がヒソカを睨むと、奴は細めた目を更に細めさせ嬉しそうに唇を震わせた。
 その唇の震えには大変不本意ながら見覚えがあったので、おそるおそる目線を下におろすと、先ほどよりいくらか硬度を増したように見える、というかそれはもう大層ギンギンにズボンの布を押し上げている「それ」と視線がかち合った。
「……、ねぇ、また下半身元気になってんだけど」
「んふ……♥ キミがそんな目で見るからだろ?」
「ヒソカってなんでこっち方面だけそんなエコなの? もうちょっと燃費悪くてもいいよ?」
「そんなに褒めるなよ……」
「褒めてないです」
 駄目だこいつ本当に言葉通じない。
 そう思った私が首を振るってため息を吐くと「元気出しなよ」とポンと肩を叩かれた。
 一瞬、割とガチでこの男を念能力でどうこうしてやろうか、とまで思ったが今以上にヒソカに迫られたら面倒極まりなかったのでぐっとこらえた。
 ある程度の付き合いがあるとはいえ、ヒソカが本気で何かに執着している場面に私が立ちあったことはないのだ。その対象がもし自分になったらと思うとゾッとするどころの話ではない。

 大体、私は今だってどうしてここまでヒソカに粘着されているのかという理由を知らない。
 元々情報系と要人護衛の仕事で一緒になったことがあるだけで、ヒソカは私の念能力も見たことが無かった。本人に聞くところによると、彼は「強い人間」と「強くなりそうな人間」が好きらしく、特に後者は「青い果実」とかいうこの男の変態性を凝縮したかのような呼び名で呼んでいるくらいヒソカにとって大切な存在なのだそうだ。
 けれども私は多分そのどちらにも当てはまらない。
 念能力も戦闘も、もう誰に教わるって感じでもないから果実は越してるし、かといって見せたことのない私の念の性能や相性云々を加味しても、ヒソカから見て私はそれほど強い能力者ってわけでもないだろうし――まぁこちらに至っては、仮にそうであっても私にヒソカと戦う意思はない。これは本人にも少し前に伝えてあるし、もっと言えばそれに関して了承を貰ってもいる。
 だから、ヒソカは私と戦うことを求めて交流を持っているわけではないのだ。それはヒソカの内部を知る者としては死ぬほど気味が悪いことだったりする。なので時々、本人にそれとなく探りを入れたこともあるのだけれど、すげなく躱されてしまっているのが現状だった。
 まさか、ただ単に友達になりたいとか、そんな風に思っているわけでもないだろうし。
 ……まさか、いや、まさかね。
 思考の最中で思わず怪訝な顔でヒソカを見上げると、ぱちり、と視線が絡まった。
 見た目だけは無駄に整っている男の、鈍く光る橙色の瞳がまじまじと私を射抜く。
「……なに」
 笑みは浮かべたままだとはいえ、それがあまりにも真剣な眼差しであったから私は戸惑いながら言葉を零した。
 するとヒソカは一度だけゆっくりと瞬きを落としてから、色の変わらぬ瞳に私を収める。
「いや、キミってほんと……警戒心が足らないよねぇ♠」
 だが続けられた言葉は思いもよらぬ物だった。
 というか、間違ってもヒソカから出てきたとは信じられないほどの普遍的な常識を訴えるものであったから驚いた。
 しかしだからといってそれが納得できるものであるとは限らない。なぜなら発言者が発言者であるからだ。
「どの口が言ってんの。今だってバリバリ警戒してるから!」
「う~ん……そうかい?」
「だって何されるか分からないし」
「ククッ、それは期待してるってことでいいのかな……♥」
 胸の前で構えを取りながらそう言う私に対し、ヒソカは首を傾げた後、嬉しそうに口の端を持ち上げた。
 なんだかわからないけど、満足したらしい。
 この男と話してると本気で疲れるな、と思いつつ胸を撫で下ろすと、そんな私を見てクツクツと笑ったヒソカがおもむろに私の手を取った。
 前触れのない行動にはもう驚かないが、今回は振り払ったら解けそうなほどの力で掴まれていたので何がしたいのだろうと単純に気になりヒソカを見やると、ヤツは掴んだ私の手から私へと視線を移しながら均整のとれた薄い唇を開いた。
、これから予定は?」
「……特にないけど」
「じゃあボクと一緒に、イイトコに行かないかい?♣」
 今までとは違い、内緒話でもするかのような小声で発せられた声に思わず耳を傾ければヒソカがそんなことを言ってよこした。
 キスやらなんやらは一切許可を取らないというのに予定は聞くのか、とまた新たにヒソカの変な常識を垣間見た私は、しかし「イイトコ」という単語に顔を引き攣らせる。
 絶対ロクなことにならない。
 ヒソカのいう「イイトコ」を私は知らないが、ヒソカのいう「イイ」は全然良くないということくらいは知っている。
「行かない、かな」
 なのでそう答えれば「そう」とあっさりヒソカは食い下がった。
 このパターンはこれまでの付き合いから導くに、本気の誘いではなかったのだろうと判断できる。ヒソカという男は自分の思い通りにするためだったら相手の意思などどうでもいいというタイプだからだ。
 でも、ならば誘わなくていいのでは、という疑問は口にしてはならない。私が「行く」と答えていたら、十中八九連れていかれていたからだ。
 そういうときだけなぜヒソカが人の意見を尊重するかは、彼の性癖に関係している。
 一言で表すなら、この男は真に変態なのだ。

 ただ、私が答え終えても手を離してくれないのは初めてのことだった。これまでのヒソカは一度断られればそのまま別れを告げふらっといなくなることが多かった。
 掴まれたままの部分に相手の体温がじんわりと伝わってきているのを感じながら、しかし離してほしいとも言えない私がそのままヒソカを見上げていると、きゅっ、と手を握りなおされる。
 私の手よりも一回り以上大きな手のひらは、私の手を悠々と包みこんだまま熱を逃がさぬように肌を密着させにくる。
 そして先ほどよりいくらか強まった力で手を引かれると、私はヒソカについていく形でレストランから引きずり出された。
 天空闘技場のどこかの階層で試合が行われているのか、普段は賑わっているはずの一般客用エントランスには人っ子一人すら居らず、閑散とした雰囲気に包まれたその場所はいつもとは違った場所に思えた。
 広々としたエントランスの受付から少し離れた所に位置する大きな柱の近くまで足を進めると、ヒソカは再び足をとめた。
 きょろきょろとあたりを見渡す私とは反対に、ヒソカはこちらをじい、と見つめると思いだしたように喉頭隆起を上下させ、表情を柔くしていく。


 そっとした一度の呼びかけに、私の視線がヒソカに集まる。
 昼間だからか明るさの軽減されたライトがおざなりにヒソカの頭部を照らしている。脱色からか本来とは違った種類の艶が綺麗に輪を描いているのが分かる。
「キミ、これから予定ないんだろ? なら、少しボクに付き合ってくれないか♦」
 そうしてその輪を見上げる私にヒソカが改まって告げた言葉。
 その内容に、私は顔を顰める。
「それ……さっき断ったと思うけど」
「ああ、安心していいよ。それとは違う用件だから♠」
 なるほど、やはり「イイトコ」に連れて行くのは早々に諦めていたらしい。私は「ふぅん」と軽く頷いてから言葉を続ける。
「じゃあ、今度はどこに行くって?」
「……一人じゃ楽しくないトコ、かな」
 ただ、代案も当たり前のように不穏な匂いしかしない。
 けどヒソカがこうして私を一日の間に二度に分けて違う場所に誘ってくることは今までなかったので、相手の考えが読めずに戸惑う。
 まともなことを考えていないことだけは確かだろうけれど……。
 かといって、たまに本気で普通のところに誘っていることもあるので、ヒソカの気まぐれは馬鹿にできない。
「さっきのイイトコとはどう違うわけ?」
「仮にも人が殺されるような危険はないよ♣」
「ああそう……で、場所を明言しないのはわざと?」
「ククッ……ボクの性質、キミは理解してるだろ?」
 どうやらどこに連れて行くかは言う気はないらしく、ヒソカはそれきり口を噤んで返答を待ちながら私の顔面を見つめることにシフトしたようだった。
 その視線を受け真面目に考えようとしてみるものの、ヒソカの熱烈な鬱陶しい視線に思考が阻まれ、やがて面倒臭くなった私は、やっぱり断ろう、と腹の底から息を吐いて眉を下げた。
 しかしそのため息に何を勘違いしたのか、私を見つめるヒソカがにんまりと笑みを深く顔に刻んでみせる。そして同時に、繋がれたままの手を下に引っ張り「ある一点」に私の手のひらを押し付けた。
 ゴリッと、不穏な感触が手を通って脳に伝達する。
 ヒソカの包みこむような動きに合わせて、丸められた私の手がこちらの意思とは無関係に「それ」をむにむにと握りこむ。
 まだ鎮まってなかったそれはヒソカによる適度な力加減、を与えられた私の手の中でさらに迫力を増していく。
 か、帰る!
 もう駄目だ、これ以上こいつに付き合っていたら私の中の感情の色々が減っていく!
 抜け目なくヤツの念で保護された手のひらにオーラを集中させながら脱出する算段を頭の中で立てていると、黙って股間を握らせていたヒソカは楽しそうに喉を鳴らした。
「キミ……やっぱり警戒心が足らないよ」
「は……」
「普通、悪質な嫌がらせを受けたら、真っ先に案じるのは己の身だろ? ……なのにここまでされなきゃまともに抵抗すら見せない♦」
 悪質だという自覚があったことに突っ込みを入れる余裕はもう、私にはない。
 ギチギチと不穏な音を立てるヒソカの下半身と、ねばついた念に覆われた私の手に集中していると、数十センチ上にあった筈のヒソカの顔が私の顔の隣まで引き下げられる。
 ふ、と微かな息が耳を掠めた感覚で一瞬集中が途切れると、ヒソカはその隙に私の手を覆う念の膜を更に分厚いものに変えて、また「それ」をキツく握りこませた。
 いい加減、手から無理やり伝わってくるその大きさに引くことすら出来なくなっていると、ぬめっとした感触が私の耳を叩いた。
 ぐちゅぐちゅと唾液に塗れたあの長い舌が私の右耳を執拗に弄び始めると、いよいよオーラの集中なんてものは頭からすっぽ抜けて落っこちてしまった。
 体をこわばらせ、せめてもの反撃にと力強く「それ」を勢いよく握ると、「はっ」という短い呼吸の後、耳に入れていた舌を抜いたヒソカの顔がまた私の前にやってくる。
 瞳孔を開いて唇を三日月に歪ませた男は人殺しのような眼つきで私を睨むと、見せつけるようにその三日月を端から端まで舌でねぶる。
 赤く色づく舌によって与えられた唾液で十分に潤った唇をこちらがみとめるよりも先に、空いていた方の手で私の後頭部を抑えつけると、ヒソカは切れ長の瞳を興奮に染めて顔を近づけた。
「実に美味しそうだ……自分の魅力を全く理解してないところなんかが、特に……♥」
 ぶつかるように重ねられた唇の隙間に入りこんできた長い舌がまた私の舌を捕まえ、先ほどよりも激しく絡み合う中で、ふと握らされたままのそれが妙に湿っているのを感じ知らぬ間に瞑っていた瞼を開くと、瞬き一つ落とさぬ視線がじいっとこちらを射抜いていた。
 次いで私が気が付いたことに気づいたのか、少しの間を置いて差し込まれていた舌はあっさり引き抜かれ、ヒソカの顔が遠のいていく。
 そうして人為的に作られた確認出来る距離におずおずと視線を落とすと、案の定、そこを中心に濃く染みついたズボンが目に入ってしまった。
 反射的に息をのむ私に、ヒソカはぐっ、と手のひらを押し付けさせると未だ芯の残る、というより既にほとんど元通りになりつつあるその感触を確かめさせるように腰をグンッと突きだした。
 ぐちゅり、と嫌な音が耳を伝ったような気がしたが、その思考は時間を待たずに近づいてきた男のキスによって遮られる。
 数を重ねるごとにしつこさを増すヒソカの舌の動きに意識が朦朧としてくると、いやらしい音が口から聞こえてきているのか、耳から聞こえてきているのか、はたまた別のどこかから聞こえているのか分からなくなって小さく首を振るった。
 遠のく意識の途中でヒソカの笑う声が口の中に跳ね返るのを感じても、あの長い舌がまた脳の動きの邪魔をする。けれど、触覚を振り切るように首を横に震わせる動きが少しでも乱暴になってしまうと、その合間に「は……」と息が漏れて苦しさが増してしまう。
 呼吸の苦しさから涙目になりながらヒソカを睨むと、握らされた下半身がまた堅さを帯びて舌打ちをしたくなった。
 結果、その舌打ちは目の前の男に食べられることになるのだけれど。

 必死の抵抗むなしく、能力者とは思えぬ体たらくでヒソカに凭れ掛かると、それからしばらくして唇が解放された。間を糸引く唾液がぷつん、と切れてヒソカの顎に伝う。情けないことに、顔が離され後頭部に貼りついていた嫌な念がなくなってもなお、私は腰が抜け立つのもままならなかった。
 そんな私の体を今優しく抱きとめているのがそうなった全ての原因である男なのだから、何とも皮肉であるというべきか。さらにヒソカはあろうことか私をそのまま姫抱きに抱え直すと、微塵も満足していないという顔で腕の中の私を見つめた。
 むずむずと落ち着きのないヒソカの唇から熱が零され、向けられた二つの瞳が細められる。
「ダメだよ、。イきたくなかったら、ちゃんと断らなくっちゃ♠」
 最初っから断らせる気などない男の無駄口を聞きながら、私の思考はまどろむ景色の中に放りだされる前、最後の抵抗にと、微かな苦笑を濡れた唇に残していった。
ベロシティ